« 企業分析:2170リンクアンドモチベーション(3.0) | トップページ | 企業分析:3669モバイルクリエイト(3.0) »

2015-07-10

信用収縮のはなし

リーマンショックは私の投資歴の中でも最も印象深い出来事です。
言葉の通り「リーマンブラザーズ」という1つの投資銀行が潰れたときに起こった現象なのですが、よく考えると「たかがそれだけのことでなぜ株価が半分以下になってしまったんだろう。」という疑問が湧きます。
株式は中長期的に企業価値に収斂するはずです。業績が下がった企業ならいざ知らず、業績にほとんど影響がない株すらも大暴落しそこから何年も戻ってきませんでした。不思議ではありませんか。実はそれは、マネーが膨らんだり縮んだりする性質に起因しているのです。

マネーは膨らむ
マネーは、誰かが借金するとトータルで大きくなるという性質を持っています。
例えば私が100万円をA銀行に預けます。私の通帳には100万円としっかり刻まれており100万円下ろしたいと言ったらいつでもおろせます。しかし、銀行はこの100万円を金庫に入れっぱなしにしません。10万円ぐらい残して、90万円ぐらいは誰かに貸そうとします。友達BさんがA銀行から90万円を借りたとすると、Bさんの通帳に90万円と刻まれます。
私は100万円、Bさんは90万円。どちらも自由に引き出すことができるお金なはずです。こうして私の100万円は、いつの間にかトータルで190万円に姿を変えました。このようなステップを経てマネーが膨張することを「信用創造」といいます。
これは銀行を介した例でしたが、ここ数十年は金融テクノロジーによって「レバレッジ・借金」が容易になり、信用創造が当たり前になりました。FXなどの証拠金取引、オプション取引などのデリバティブ商品、世界のマネーは信用創造を繰り返して膨張するようになりました。
この膨張の正体は要するに「借金」です。借金の本質は「ないものをあることにする」なのですから、よく考えると「借金=膨張」なのは当たり前とも言えます。

そして縮む
マネーが膨張していても基本的にはさしたる問題はありません。しかし何らかの理由で全て返す必要に迫られると、膨張は縮み、そして色々と厄介なことが起こります。
例えばFX。5万円で100万円の取引をしている間はあたかもマネーは100万円として振舞いますが、為替が下落しロスカットが発生すると強制売却され、膨張は巻き戻ります。為替の場合この巻き戻しが一斉に起きるため需給バランスが破壊され一気に売却方向へ動きます。
そして「借金が返せない」レベルになると更に深刻です。この場合は巻き戻るだけではなく連鎖が起きます。
この例として連鎖倒産があります。これは最初の1社が潰れると、そこに貸していた(売り掛けてた)お金が戻ってこないため貸した側のB社がピンチに追い込まれ倒産。そしてそこに貸したC社、、、と連鎖する現象を指します。
現在、世界のマネーは貸し借りを前提につながっており、一つが潰れると果てしなく連鎖します。そして、この連鎖による信用収縮によって、極端な需給バランスが生まれ、世の中の金融商品は大暴落をしていきます。

リーマンショックで起こったこと
リーマンショックではまさにこの連鎖が世界的に起きました。サブプライムローンと呼ばれる期間限定の低金利に支えられていたローンが、あるタイミングで高金利になり返せなくなる。このリスクを織り込んでいなかった金融商品を大量に持っていた金融機関が破綻。その金融機関に貸していた(この発行体の債券等を持っていた)企業に大ダメージがあり、命からがら株などの資産を売却。株が下がることで、株にレバレッジをかけていた投資家・銀行が破綻する・・・という連鎖と悪循環による大規模な信用収縮が起きたのです。
ここまで株の企業価値の話は一切ありませんでしたが、リーマンショックに株の価値なんかさしたる意味はなく、キャッシュフローの問題だったということです。

要するにトリガーは「破綻」
ここまでの話で分かるのは金融危機のトリガーは基本的に「破綻」だということです。破綻するから、貸し手に連鎖し、金融危機が生まれます。そう考えると日々のニュースもそういう視点でみるようになります。

・FRB利上げでは、損する人は居ても大規模な破綻はなさそう。
・ギリシャ問題、債務額40兆円程度、7割がECB、IMFだが連鎖はありうる。ドイツ銀行は格付け下落
・中国、短期筋の投機家は破綻。その破綻は次に広がるか。記事

ここしばらく世界的信用収縮を起こしうるイベントが少なくありません。

ここまでのまとめ
・マネーは借金によって膨張する
・1つの破綻が連鎖を生むと、膨張したマネーは一気にしぼむ
・リーマンショック級で、株価は半分以下になる。企業価値は関係ない
・ここしばらく信用収縮が懸念されるようなイベントが続く

中長期投資家はどうすればいいのだろう
このような背景を踏まえて、中長期投資家が取る道は大きくは2つあるように思います。

①(金融危機懸念を無視して)中長期投資を貫く
現物で株を保有しているなら高々半額になるだけですし、バーゲンセール中に納得のお買い物もできます。嵐の中の航海も悪く無いと思います。

②リスクを見て撤退/参加を繰り返す
今行っているのはこの選択です。航海を止め、陸に上がるような行為ですが、株式の成長を享受できません。また陸に上がるタイミング・基準が難しく、未だに頭を悩ませています。

この話はリーマンショック経験者にとっては当たり前の話だと思っていますが、意外と知らない人も多いのかなと感じて書きました。金融のプロではないので稚拙な文章かつ多少の誤解も混ざっているかもしれませんがご容赦ください。

« 企業分析:2170リンクアンドモチベーション(3.0) | トップページ | 企業分析:3669モバイルクリエイト(3.0) »

投資一般」カテゴリの記事

コメント

すぽさん、おはようございます。

すぽさんの今回の話を私はレイダリオ氏の動画で見ました。信用収縮についての考えはほぼ同じだと思います。すぽさんの説明も分かりやすかったですが、レイダリオ氏の「30分で分かる経済のしくみ」も分かりやすくておすすめですよ。

ただ、これを理解した上で投資家としてどう行動するのかが難しいですよね。普段のキャッシュポジションの割合でも対応が変わってきますし、そう考えると各々にあったリスク管理をしていかないといけない、でもピンチはチャンスですし。

ホントに投資に正解なんてないですね。

THさん、ありがとうございます。
不勉強で初めてその動画を見ました。素晴らしいですね。
レイダリオさんは「周期」でお話しされていましたが、その理由の言及が少なかったので、著書等があれば勉強したいと思います。

すぽさんおはようございます

マーケットハックの記事は私も読んでいました。
私のブログの記事に書いたような理由で中国のハードランディングが起きても金融収縮はほぼ中国国内で完結して、世界的な金融収縮にはいたらないのではないかなと判断していますが、膨張していたチャイナマネーが中国国外に流れてミニバブルを起こしている影響を考慮する視点が抜け落ちていました。大量に流れ込んでいるのは不動産が中心なんでしょうか?そしてそれがどの程度の規模なのかも気になりました。

私も情報収集に努めて(情報が正しいのか間違っているのかの判断は難しいですが、、、)もう少し考えてみたいと思いました

sunさん、ありがとうございます。

私は大規模信用収縮が「あるエリアで限定的に収まる」という考え方はあまり持っていません。基本的に全世界に波及するものだと思っています。
中国の海外投資額などが分かればそれに越したことはありませんが、おそらく結論は変わらないだろうと思っています。

確かに世界経済は互いにつながっていますし、特に欧州、アジアは中国とつながりが深いので、中国クラッシュ→欧州・アジア経由→アメリカへも波及すると考えたほうが自然なきがしてきました。
ただそれでも基軸通貨ドルの国アメリカが震源地だったリーマンの時と比べると国際通貨にすらなっていない元の中国が震源地ならリーマンの時よりはマシなものになると思いますし、さらにリーマンの時は住宅バブル崩壊でアメリカの家計が過剰債務の状態に陥ってしまったために、世界一のGDPのうち7割を占める個人消費の低迷が長引き、結果として回復するのにものすごく時間がかかったわけですが、今回はそれがない分、少なくともアメリカ経済が立ち直るのはリーマンの時よりはるかに速いはずだと思います。

この記事のおかげで大切な点に気がつくことができました。
ありがとうございます

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/501355/61868418

この記事へのトラックバック一覧です: 信用収縮のはなし:

« 企業分析:2170リンクアンドモチベーション(3.0) | トップページ | 企業分析:3669モバイルクリエイト(3.0) »