サイゼリヤと餃子の王将
企業の強みや戦略を考えるときに、私はサイゼリヤと餃子の王将の例をしばしば頭に浮かべます。この二つの企業の戦略の違いは非常に興味深いものです。
この2つの店については多くの方がご存知かと思いますが一応紹介すると、サイゼリヤはミラノ風ドリア(税抜299円)などに代表される低価格イタリアンレストラン、餃子の王将は活気や出来たてが特徴の中華料理店です。どちらも高収益を誇る優秀な企業です。(最近は原料高で多少苦労しているようですが)
現場主義かシステム主義か
一つの成功例をコピーし続けることで成長する外食チェーンにとって、「店舗運営」は企業の生命線そのものです。この店舗運営の方針には、大きくは「現場に任せる」と「ルールを徹底する」の2つの方向性があります。皆さんはどちらが望ましいと考えますか。
システムのサイゼリヤ
サイゼリヤは「効率・科学的」に徹底的にこだわっている企業です。徹底したセントラルキッチン(工場で作る)方式で、店舗には包丁一つなく、バイト数人(トータルの時給3,000円ぐらい?)で大量の食事を提供できるシステムがつくられています。こういった効率への徹底的なこだわりを通じて、あの驚異的な低価格を実現しているのです。
詳しくは正垣さんの本で
現場主義の餃子の王将
一方で、餃子の王将は徹底的に現場主義です。現場にメニューを作る権限があり、店舗によってメニューが違います。調理場も熟練の料理人が大きな包丁や中華鍋を操りテキパキと切り盛りをしており、見ているだけでも楽しくなります。この活気や出来立ての味を求め、お客さんが集まってきます。
実は方向性なんか何でもいい
この2つの例が示していることは、つまり「方向性なんか大した問題じゃない」ということです。大切なのは方向性ではなく、突き抜けることなのです。サイゼリアは突き抜けた価格で、餃子の王将は突き抜けた現場調理力を生み出し、多くのお客さんを集め高収益を上げているのです。
低価格戦略、高付加価値戦略など、企業の戦略の方向性で企業を語りたくなることがありますが、実は答え(お客さん)が色んな方向に隠れていて、重要なのは「その方向で突き抜けているか」かどうかである。
こんなことをこの2つの企業が教えてくれています。
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コメント
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どちらも行かない週はないくらいの、
ヘビーユーザーとしては、
何を置いてもリーズナブルな価格設定が気に入ってます。
特にサイゼリヤは、読書や勉強、ブログの更新でも利用するので、
2000円になる前に買っておくのもありだったと思っています。
投稿: fhiyoshi | 2015-06-13 16:41
すぽさん、こんにちは。
以前、すぽさんにこの話を教えていただきましたね。
方向性よりも、突き抜けていることの方が大事という意味では、
私はディズニーリゾートと富士急ハイランドを想像しました。
ディズニーは夢の世界に浸る、富士急はとにかく絶叫ということで、
目指す方向こそ違えど、どちらもその分野では他の追随を許さず、
連日大盛況ですもんね。
逆に、特に「売り」のないオーソドックスな遊園地などは、
時代と共に閉園に追い込まれるところも少なくなさそうです。
株式投資においては、こういう突き抜けた企業を探すとともに、
本業の経営においてもこの考えを活かしてゆきたいと思いました。
投稿: ゆうゆー | 2015-06-14 05:54
fhiyoshiさん、ありがとうございます。
どちらも昔からわりと人気銘柄だったので私も保有できずにいますね。
サイゼリヤの正垣会長はとてもユニーク方で、初めてテレビで見て一回でファンになりました。
「小さな洋食屋を始めたが、潰れそうになったので値段を下げた。3割ぐらい下げても焼け石に水だったのだが、ヤケクソで7割下げたら、広告も何もしていないのにお客さんがあふれるようになった。」
「店舗拡大は、入れないお客さんに申し訳ないと思って、店の近くにもう1軒出すということをやっていたら結果的に増えた」
語録は尽きません。
投稿: すぽ | 2015-06-14 08:37
ゆうゆーさん、ありがとうございます。
この話は好きな話なので、いつか記事にしようと思っていました。
ポイントは突き抜けた先で、「お客さんがどう喜んでいるか」ということですよね。
ゆうゆーさんの例では、
・夢の世界に喜んでいるお客さん
・絶叫体験で喜んでいるお客さん
この人達が、それぞれの遊園地にしか行けないという状態にできれば「勝ち」ですね。
投稿: すぽ | 2015-06-14 08:44
はじめまして。
すぽさんさんの投資資金はいくらくらいなのでしょうか??
円グラフ見ても何株保有なされてるとかわからないので。
投稿: A | 2015-06-16 11:16
教えません。なんですかその失礼なハンドルネームは?
投稿: すぽ | 2015-06-16 12:15
非常に参考になる記事でした。結局は何か一つでも他の企業に負けないものを持っていることが大事ですね。場合によってはそれが知名度という企業もあるかもしれませんが。
投稿: apen | 2015-06-16 12:30
すぽさんさん。
私は日本在住のアメリカ人でして名前はエースと言います。
いつもハンドルネームではAでやらせていただいてます。
気に障るようでしたら申し訳ありません。
今後はエースとして投稿致します。
質問の回答ありがとうございました。
想像だけしておきます。
投稿: A | 2015-06-16 14:26
エースさん、失礼しました。
名前だけの問題ではなく、あなたの振る舞いとセットで不信感を持ったため冷たい対応になりました。
1.不用意に質問してくる
→資産を公開する気なら、こんなまどろっこしい表記(10000がどう増えるか)にはしないはず。資産を公開したいと思っていないのではと慮った様子が感じ取れない。
2.このブログをしっかり読むつもりがなさそう
→日経ヴェリタスでも私の資産の桁数は載せている上、エイジアの流動性がキツイあたりからも推測しようと思えばできるが、そうした形跡もない
もし差し障りが無ければ、「A」を使われて書かれた他の掲示板等のリンクをいただけませんか。残念ながらまだ素直に信頼できない状況です。ご協力いただければ幸いです。
投稿: すぽ | 2015-06-16 19:50
apenさん、ありがとうございます。
名前そのものが強みになっていることを「ブランド」といいますよね。ブランドは信頼や期待を載せたものですので、凡庸な商品を提供していると強みではなくなってしまいますね。
ブランドは面白いテーマなので、色々と考えを巡らすことがありますが、いまだにスッキリした答えは出ていません。蛇足でしたが。
投稿: すぽ | 2015-06-16 19:58
非常に素晴らしい記事ですね。
サービス、小売業に限らず製造業にも当てはまる理論だと思います。
小型車のスズキ、空調のダイキンの様な感じですね。
やはり資本には限りがありますから、徹底的に強さに磨きをかける
そういう企業は比較的強いですね。
投稿: ユリウス | 2015-06-17 01:39
すぽさんさん。
申し訳ありません。
アメリカのウェブサイトへの投稿が基本なので、英語分からなければ意味ないので、やめておきます。
日本株これから注目してますのでこちらのサイトや色々な投資家のサイト見ていきますね。
投稿: エース | 2015-06-17 11:05
ユリウスさん、ありがとうございます。
おっしゃる通りで、この考え方は様々なところに通じる話だと思います。
一方で、この「突き抜ける」という考え方は、あくまで競争があるところの話ですので、投資家の視点でいうと「ビジネスモデル」の方が安心感があります。
戦国時代の戦いでいうと、練兵・戦術で勝ち負けを争うよりも、お掘りなどにより攻めようがない場所に居を構えている方が安全という感じでしょうか。
投稿: すぽ | 2015-06-17 12:29
エースさん
URLを頂きたいのは、コメントの内容を確認したいのではなく、「A」というハンドルネームで書き込んでいることが事実なのかを確認する趣旨ですので、もちろん英語のサイトで構いません。
それほど負担になるお願いだとは思わないのですが。
どうぞよろしくお願いします。
投稿: すぽ | 2015-06-17 12:35
コメントありがとうございました。
私のブランドの認識と少し違ったので再度コメントさせて頂きます。
ブランドではなく知名度と書いたのは両者が少し違うものだと思っているからです。知名度は先にコメントされていたゆうゆーさんのブログに過去に書かれていた先行者利益についての記事があてはまるかもしれません。つまり利用者が多く、誰でも知っているモノやサービスです。これは先行者利益として必ずしも品質などと一致しないこともあると思っています。
ブランドは難しいのですが品質は必須だと思っています。ある一定のメッセージを強烈に打ち出しているものというイメージでしょうか。
もちろん人により認識の差があると思いますが。すぽさんがおっしゃるようにブランドはなかなか面白いテーマだとおもいますので更なる考察の記事にして頂けたら非常に興味深いと思います。
投稿: apen | 2015-06-17 23:32
apenさん、ありがとうございます。
知名度とブランドは違う。なるほど、なんとなくニュアンスは分かります。
お客さんにとって入り口は「知名度」ですが、商品利用の経験を通して「ブランド」になっていくという感じかなぁと思いました。
ブランドについてはすっと記事にできるほど整理が出ていませんので、記事にするのはもう少し悩んでからになりそうです。
投稿: すぽ | 2015-06-18 00:04
すぽさん、はじめまして。株初心者のKIRINと申します。
ゆうゆーさんのブログで何度かすぽさんの紹介をされてて、以前から深い内容の記事を読ませて頂き勉強しております。どうぞよろしくお願いします。
餃子の王将についてのコメントが少ないようでしたので、ファンとしてコメントさせて頂きます^^;
「現場に任せる」系の全国チェーンは、現場に高いレベルの技能が必要なのと店舗拡大したときに質が落ちていかないように教育していくノウハウが求められるためか、サイゼリヤのような効率重視な会社のほうが最近勢いがあるように思います。
でも私は中華食べようと思ったらまず近所の王将に行くことを考えます。(美味しいし、安いし、料理が出てくるまでが結構早いので)
近所にはセントラルキッチンを採用している中華ファミレス店もありますが、味を比べるとどうしても王将に行きがちになります。
私が住んでいるのは地方ですが、このクオリティを維持しているのはスゴイことだと思います。
まぁ店舗間での味の差が出てしまうのは、全国チェーンとしてやや課題ではありますが。
王将の前社長だった大東さんは、朝6時から本部の玄関前を掃除したり、数々の名言を残している名物社長でした。そのため王将は社長の影響が強い会社で、亡くなられてからどうなるのか少し心配してました。
最近の業績はやや奮わず、最近まで社長の影響かと思ってましたが、すぽさんの論「社長や社員より、市場環境とビジネスモデル」を読んで、社長の影響というより円安や出店余地などの「市場環境」の問題で最近は伸び悩んでいるのかな?と考え直すようになりました。
株は優待目的くらいでしか保有する予定がないのですが、これからも中華食べにはちょくちょく利用したいと思います。
投稿: KIRIN | 2015-06-19 23:15
KIRINさん、コメントありがとうございます。
大東さんが亡くなったのはびっくりしましたね。
業績不振はまずは「市場環境」から考える方がよいと思っています。ただ、「突き抜ける」強さを作るには指揮者である社長の力は欠かせませんので、影響度は小さくないと考えるべきでしょうね。
他の現場に任せる系では「大戸屋」なんかも面白い会社ですね。客層が素晴らしいです。
投稿: すぽ | 2015-06-20 01:12
コメントありがとうございます。
大戸屋は私の近所にないのですが、たまに旅行した時に食べに行きます。1000円未満で和食が食べられる上(和食店はもう500円くらい高そうな印象)、安い価格に見合わないくらい料理が美味しいです。
この企業力の良さも、「現場に任せる」ことにあったのですね。勉強になります。
全国展開できる力は持っていると思うのですが、まだ関東以外での出店が少ないので、王将のように地方にまで出てきて欲しいですね。
大戸屋HDはすでに株高になっていて、今から保有するのは難しそうです。。。
このような優良企業を保有できるように、成長を早い段階で見抜ける目を養っていきたいと思います。
投稿: KIRIN | 2015-06-20 09:37