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2014-04-09

続・お金の入り口に目を向ける

前回のエントリは一話完結のつもり書いたのですが、もう少し深く考えてみるのも面白そうなので続編です。

なぜ「お金の入り口に目を向ける」のか

「お金の入り口に目を向ける」と、なぜビジネスモデルが見えてくるのでしょうか。それは、お客さんが支払ってもよいと思っている金額と、実際に支払う(支払った)金額には、想像以上に大きな開きがあり、ちょっとした価格の変化によって、企業(の利益)は天国と地獄ほどの違いが生まれるからです。引き続きアサンテの例で考えてみます。

3つの金額

まずあらためて、以下の3つの金額を考えてみたいと思います。

①実際の価格
②企業がかけたコスト
③お客さんが払えた最大金額

まず「①実際の価格」です。これは前回の例の通り、20万円(25坪×8,000円)とします。
次に①のときの「②企業のかけたコスト」はどうなるでしょうか。これは営業利益率が15%程度ということから逆算します。コスト(原価、SGA、R&D合計)は、17万4千円程度で、残りの2万6千円ほどが(営業)利益だったということです。
では、最後に「③お客さんが払えた最大金額」です。ここはよく考えてみる必要があります。22万円ですか、30万円ですか。
もちろん人によって違うものですが、おそらく多くの人が100万円ぐらいまでは支払うというのが私の感覚です。根拠はリフォーム詐欺です。リフォーム詐欺では、不安を煽ったり相場は200万円だなどと言っては値段を跳ね上がらせますが、お客さんにごねられないようにするために、概ね100万円以内にするそうです。
人は自分の家の一大事だと感じれば、100万円ぐらいまでは支払う気になるのです。

1

図では、別の例についても考えました。40型液晶テレビはつい最近まで1インチ1万円が相場だと言われて支払っていたことから最大額を決めました。MSオフィスはほぼ独占なので、MSが概ね最高価格をつけていると考えました。参考:ビジネスモデル:マイクロソフトのWindowsやOfficeの利益率
水1リットルは、山のぼりや震災時の水道水が飲めなかったパニック時などを考えれば想像できます。本当はもう少し高くても支払うかもしれません。
気づいてほしいのは、世の中のたいていの商品において、②と③の幅(レンジ)は極めて広く、多くの場合で最高の価格がつけられれば営業利益は9割ちかくになるということです。

お客さんは企業側の事情に興味が無い

こんなに広いレンジの中で価格が決定するわけですが、一方で「お客さんは、企業側の事情に興味が無い」ことも、面白いポイントです。
お客さんは、企業が赤字だろうか、営業利益率9割だろうがあまり興味がありません。ただ、他のものを比較しながら一番よいものを安く買おうとするだけです。言い換えると「お客さんはレンジのどこで支払おうが満足」なのです。

ビジネスモデルの役割

で、ビジネスモデルの役割をあらためて考えてみます。ビジネスモデルの役割とは、要するにこのレンジのどこで価格を決定させるかということです。ビジネスモデルがない企業は、価格競争によって価格はコストに張り付きます。つまり営業利益率ゼロ、もしくは赤字です。液晶テレビがこれです。
アサンテの場合、お客さんが、信頼のある企業のサービスを受けたいと思うため「多少高くても」支払ってくれます。このちょっとした差・心の機微が、営業利益率15%を生んでいるのです。

というわけで、なぜ「お金の入り口に目を向ける」のか。それは、お客さんは(実は)いくらでも満足なのに、企業にとっては企業存続の生命線になってしまうのが「値段」であり、そこを注意深く見ることで、「企業のお金のもらい方≒ビジネスモデル」がみえてくるからです。

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投資一般」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。

すぽさんのエントリーを読んでいると、
自分も定性分析が出来るような気がしてくるのですが、
実際に自分の頭で考えながら分析しないと出来るようにならないですよね。
自分なりに学びを深めようとしているのですが、
すぽさんが4.0以上の投資適格にする銘柄と
自分のそれとが一致することはまずありません。

ところで、6058ベクトルについては如何思われますか?
指標的には割高ですが、企業のテレビCM費削減というメガトレンドがあり、
市場環境は良いと思いますが。
テレビCM→ネット広告の広告業界の変容を追い風とする会社であり、
東南アジアに進出する企業の橋渡し役をするという意味で、
3660アイスタイルと似ていると思います。

前の記事のコメントにあったタケエイですが、一般に廃棄物処理事業は利益率が高いです。
新規参入がないからです。
廃棄物処理場はいわゆるNIMBY施設と言われ、必要なのですがいざ建設するとなると地域住民から強い反対運動をされます。他に該当するのが斎場とか原発、空港などですね。廃棄物処理場というのは建設するのに地域住民の合意や行政機関からの許認可が必要なので大変な手間がかかるので新規参入がほぼありません。又、ゴミは運送コストが非常に高く、一定以上の距離からゴミを集めても採算が合いません。首都圏のゴミを処理できる場所は限られたところにしかないのです。
タケエイは首都圏という大需要地の近くという恵まれた立地に処理場を持ち、新規参入がないことから価格競争に巻き込まれないので高い利益率を実現できているのでしょうね。

ぽぽさん、コメントありがとうございます。

私の分析は、あくまで私が考えただけのことです。ぽぽさんがご自身で考え、違う結論に至るのであればそれを大切にされる方がよいと思います。

さて、6058ベクトルです。成長力は素晴らしいですが、ビジネスモデル面と割高感が気になります。3.5です。
ベクトルは戦略的なPR(パプリック・リレーションシップ)に特化した広告代理店です。ぽぽさんがおっしゃる通り、広告市場は、これまで花形であったCMの費用対効果が下がりつつあり、より中立的・フラットなコミュニケーションにシフトしています。ベクトルはその流れをしっかり享受し、20〜30%程度で継続して成長しています。株価は3分割した後で少しわかりづらいですが、来期PER33.8でやや割高です。
ビジネスモデルがイマイチはっきりしません。今のところニッチ市場扱いでさしたる競合も無く順調に成長していますが、今後どうなるかはわかりません。電通や博報堂といった大手広告代理店は、現在は(あまり儲からない)PRよりも、包括的なメディアミックス的な提案が中心ですが、今後は本気で参入してくる可能性もあります。
成長力が素晴らしくSランクですが、ビジネスモデルの安定感を考えると、もう少し安くならないと買いづらいという印象です。

(名無し)さん、コメントありがとうございます。

まさに「ビジネスモデル分析」ですね。詳しくご説明いただき大変参考になりました。タケエイの営業利益率は私が考えていたよりも安定感がありそうですね。評価は2.5と書きましたが、3.0に引き上げさせて頂きます。
ビジネスモデルとしてもう少し深く考えると、面白い投資先が見つかるかもしれません。

今後もコメントをよろしくお願いします。

同じ廃棄物処理の会社だったらダイセキのほうがよっぽど安定感があると思いますよ バリュエーションのほうもそれなりになってますが

名無しさん、ありがとうございます。
ダイセキ確認しました。なるほど、安定感がありますね。
ただ、タケエイと同様に、今後の成長に関して不安が残る点と、PER20程度であることを考えると3.5に近い3.0という印象です。
今後もよろしくお願いします。

こんばんは。
すぽさんのお金の入り口のお話とても興味深く拝見させて頂きました。
システムリサーチの分析ありがとうございました。
IT関連でもしっかり差別化できる何かを持っていないと難しいってことですね。参考になりました。
またお時間ある時にFPGの分析頂けたらと思います。シェアと競争力は中々ではないかと思っています

ベクトルの分析をして頂き、ありがとうございました。

現在のところ非常に高成長ですが、
ビジネスモデルが他社の参入を阻んでいるわけではなく、
大手企業の参入があった場合、
現在の優位性が崩れてしまう可能性があるのですね。

すぽさんの言うビジネスモデル(=他社と明らかに違う優位性)
についてこれからも勉強していきたいと思います。

Nickさん、質問ありがとうございます。

IT産業とWebビジネスは分けて考えた方が良いと思います。
IT産業はコストがかかりますし、成長も期待できません。NECや富士通に中長期的な成長を期待する人は少ないと思います。
Webビジネスは、基本的に「変動費ゼロ」になっていることが多く、一線を越えると爆発的に利益が生まれます。また既存(リアル)ビジネスからコスト差によって市場を奪い続けられる状態になっていることも多く、中長期的な成長も期待できます。

さて、7148FPGの分析です。ユニークな業態で、競争優位性がとても強く、成長余地も期待できるよい企業だと思います。4.0です。
FPGは「タックス・リース・アレンジメント」という、節税(繰り延べ)スキーム組成事業を中心とする、会計プロフェッショナル企業です。この事業は、技術力やコネクション作りが参入障壁となりほとんど独占状態です。当然利益率は高くなります。(何を売上にするかによって変化しますが、IRでは営業利益率50%程度です)
ニーズが旺盛なのに関わらず、「スキーム組成の資金調達」と「人材」という企業側の事情がネックで仕事をお断りしているという、他社がうらやむような状況になっています。今後の成長余地は計りづらいですが、飛行機市場の規模に対して、まだまだ小さい事業ですのであまり心配はなさそうです。一点、一つ一つの案件が大きいため、成長は間違いない中でも多少ブレは発生するのは注意点です。来期PERは18.5で割安です。

「成長、ビジネスモデル、割安」がそろったA→S戦略と言えます。他銘柄との入れ替えを踏まえ購入を考えたいと思います。

こんにちは。いつも楽しみに拝見させて頂いております。

7148 FPGは、私も保有しておりますが良い銘柄ですよね。
あと、ストックビジネスの銘柄として、8771 イー・ギャランティも保有しているのですが、
こちらについては、すぽさんはどのように評価されますか?

できましたら分析頂ければ嬉しいです。(^^)

すぽさん
はじめまして。毎度すぽさんの分析を読み勉強させていただきたいてます。
ところで、CEホールディングス4320はいかがでしょうか?電子カルテは成長性があり、先日の上方修正の割に通年予測は保守的で、更に上値を追いかけていくように思います。

ひよこさん、質問ありがとうございます。
FPG、イーギャランティと、一般投資家にはなかなか難しい企業を選ばれていますね。金融関係の仕事をされている方でしょうか。

さて、8771イーギャランティ分析を行いました。全般的に良い企業だと思います。株価が高めなので3.5です。
イーギャランティは売掛債権保証など、様々なリスク保証商品を組成する企業です。組成した商品の多くは金融機関に売却(流動化)するため、イーギャランティ自身はリスクを取らないこともポイントです。
ビジネスの形がわかりづらいですが、一例で言うとこんな感じです。

売掛債権保証額 1,000万円
保証料 50万円(5%) ←顧客がイーギャンラティに支払う
流動化(金融機関に転売)20万円(2%) ←イーギャランティが債権保証を行う金融機関などに支払う。

FPG同様に技術力とコネクション力の両方が求められ、参入障壁が高いことが特徴です。このため営業利益率も高い(30%程度)です。
ただ、リスクを負う金融機関が2%の取り分に対し、リスクを負わないイーギャランティが(5%−転売2%)3%という関係を考えると、独占の中でしか付けられない価格かもしれません。長期的視点では、競合が現れた時のリスクも意識しておいたほうがよさそうです。

成長面は売上はAクラスの成長ですが、利益率も上昇しており、営業利益額ではSクラスの成長をしています。一応ストック型ですが、1年契約の売り切りを繰り返していくような販売形式なので、多少弱めのモデルと考えた方がよさそうです。株価は来期PERで31.6、PBR5.76でSクラスに近い価格です。
FPGに比べると中長期的な成長見通しと、株価の割高が気になります。3.5です。

分析、ありがとうございます。
イーギャランティは昨年5月に4600円程度まで騰がりましたが、現在、2100円程度まで下がってきています。
昨年の高騰に比べると、かなり、まともな株価になってきた感はあります。
この先、景気が良くなってきて企業活動が活発化すれば、まだまだ成長の余地はあると思っているのですが、どうですかね。
東京オリンピックの開催もありますし、アベノミクスも順調に進展して欲しいです。(^^)

あっ、書き忘れました。
すぽさんのご推察通り、職業は金融関係のSEやってます。(^^)

ひよこさん

PERがまだ高いのが気になります。成長も営業利益率改善効果が大きかったので、今後20%程度の成長を続けられるかという点では懸念が残ります。
中長期保有ならよいと思います。バブルに期待するのはオススメしません。

すぽさん。

すぽさんの言われる通り、今後も高い成長が続かないと、ただの割高株で終わってしまいますよね。
自社はリスクを負わずに収益を得るというビジネスモデルに惚れこんで購入した銘柄ですが、業績面を注視しながら保有して行きたいと思います。

親切なアドバイス、本当にありがとうございます。

マサさん、返信が遅くなりました。4320CEホールディングス分析しました。割安で成長しており目を引きますが、今後の成長に確信が持てません。3.5です。

CEホールディングスは、電子カルテ事業を主力にする企業です。NECのシステム案件と一緒に販売されることが多い、いわゆるNEC系列です。シュアは富士通に次いで2位。取り立てたビジネスモデルは見つかりません。期待する保守売上も多くないようで、売上減による赤字の年もありました。株価は来期PER9.9でかなり割安です。
ポイントは、ここ数年の売上の急成長と今後の見通しになるかと思いますが、ここが正直よく分かりません。大病院の6割が電子カルテを導入済みで、ある程度売り尽くしたようにも見えますし、小病院は9割が未導入なのでまだ伸びると考えることも出来なくありません。
私は確信が持てないので3.5としましたが、マサさんが成長に自信を持てるなら投資対象とされるのもよいかと思います。

すぽさん、CEホールディングスの分析ありがとうございます。確かに仰る通り、今度の成長性をどう考えるかにつきますね。私は仕事柄、電子カルテは今度も堅調に伸びると踏んでますが、油断せず盲信せず、動向を注視しようと思います。ありがとうございました。

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